託児所「くれよん」
3月5日、春の陽気に誘われて、当法人の託児所「くれよん」に通う幼児6名と保育士4名が散歩の途中でホームに立ち寄り、入居者の皆さんと交流しました。突然の訪問にみんな大喜びで出迎え、まだ2歳にも満たない、よちよち歩きの無邪気な表情と仕草に「むぜなぁ(可愛いねぇ)」「いくつね?(何歳ね?)」「お名前は?」と、小さな手を握ったり頭を撫でたり、抱っこしたりと、それはそれは可愛くて仕方がない様子でした。
託児所「くれよん」は、法人内の事業所に勤める職員の福利厚生の一環として、平成23年7月に開所しましたが、こうした幼児や児童との世代間交流は生きがいを失いつつある高齢者に活気を与え、子供たちもまたお年寄りと日常的に触れ合うことで老化や命の尊さを知り、支える術を自然と身に付け、活力ある高齢化社会と地域社会を実現できるかもしれません。まずは先入観や偏見なく高齢者と付き合える環境づくりが大切です。
霧島市内のグループホーム・小規模多機能ホーム・認知症デイサービスが組織する霧島市地域密着型サービス事業者連合会では、3月25日に霧島市と共催で『認知症セミナー2012霧島』を開催しました。このセミナーは、医療・福祉施設等で働く職員、利用者(家族)、一般(市民)等を対象に、認知症に起因する行動障害(問題行動)に焦点を当て、なぜ奇異な行動をとるのか?その原因は何なのか?認知症のお年寄りはどのような世界を創りあげているのかをこれまでの人生経験や日常の暮らしを細やかに再現することによって、何を大切にしているのか?人間関係のあり方や地域社会とのつながりは過去と現在の生活をどのように結びつけているのか?について、昨年の南日本新聞連載コラム「こころはいつまでも(認知症の人々の世界)」の著者で長野県看護大学長の阿保順子先生を講師に招いてご講演いただいたほか、「たけちゃん一座」の介護劇では、認知症だった霧島トメさんの三年忌にトメさんが家庭や地域で引き起こした様々な問題行動を回想しながら、トメさんが家族に伝えたかった思いに気付き、家族の愛と絆の大切さを笑いと涙の感動ストーリーで熱演しました。
参加者へのアンケートで「講演の内容がとてもわかりやすく、自身の認知症ケアへの気付きや振り返りになった」「利用者の家庭や社会とのつながり、結びつき(関係性)、過去の生活・職歴、人生観やこだわりを紐解き、大切にしたい」「観察力や創造力を養い、“なぜ?”の探究心を持ち続けたい」等の感想が寄せられ、大変好評でした。
講演終了後、鹿児島は初めてという阿保先生を当ホームの村岡・福重・吉原が霧島温泉郷の露天風呂にご案内して“裸の付き合い”でもてなしたほか、夜の懇親会では、後藤博孝連合会長、たけちゃん一座ほか関係者と焼酎を酌み交わして親睦を深めました。
翌26日、鹿児島を離れる阿保先生には空港へ向かう途中「ゆうゆう」に立ち寄っていただき、入居者・職員全員でお見送りをしました。…阿保先生、ありがとうございました。なお、今回の講演を記念して阿保先生に色紙を書いて頂きましたので、ご紹介します。
白寿
1号館に入居するハルヱさんが、3月23日に99歳の白寿を迎えました。おめでとうございます。白寿は百(歳)にひとつ(一歳)足りないことから、白のちゃんちゃんこに頭巾を装い、末広がりで縁起がよい扇子を手に、長寿を祝うものです。
管理者(村岡)の祝辞とご家族を代表して伊堂寺さん(長女婿)の謝辞に、ハルヱさんはやや緊張した面持ちで聞き入っておられましたが、参列した入居者から「おめでとう!元気で長生きしやったなぁ。私たちもあやかりたいよ」と自分のことのように涙を浮かべて喜んでくださいました。
ハルヱさんは、大正2年3月23日に旧日置郡下伊集院村(日置市)に生まれ、22歳で結婚後、満州に渡って一女をもうけましたが、終戦の混乱から命さながら引き上げ船で帰郷。戦後は役場に勤める夫を農業で支え、ご苦労されたそうです。
平成16年4月から当ホームに入居され、シルバーカーで散歩したり、新聞の活字を読んだり、食べ物の好き嫌いもなく食欲旺盛! のんびりマイペースで過ごされています。ハルヱさんは毎朝食堂の“日めくり暦”をめくるのが日課で、この調子で365枚めくれば百歳は目前です! …ハルヱさん、これからも健やかにお過ごしください。
介護保険料改定
今月から介護保険料が改定されました。「走りながら考える」の言葉通り、制度や料金が改定されるたびに国民の保険料負担が増え、サービス提供事業者は運営形態を見直すなどの対応に追われてきましたが、今回も鹿児島県内の65歳以上が支払う月額保険料が平均18%増の4,946円(全国平均4,972円)で、介護保険制度が施行された平成12年(県平均3,116円)の約1.6倍です。なお、グループホームについては、当ホームが運営する2ユニットの場合、下記の通り、各介護度に応じて保険料が引き下げられました。
【編集後記】
深刻な少子高齢化・核家族化・過疎化に歯止めがかからないなか、「安否確認にタクシー参入」の新聞記事が目に止まった。病院送迎や買物代行、タクシーの御用聞きは独居老人の安否確認にまで及び、需要に繋がるか注目される。高齢者の安全を守るべき家族力・地域力が衰えた日本こそ安否確認が必要だ。
3月4日に霧島市隼人町姫城地区で徘徊SOSネットワーク協議会主催の徘徊模擬訓練『どけ行ったろ徊(かい)?』が開催され、霧島市地域密着型サービス事業者連合会、霧島警察署、霧島市消防局、霧島市役所、隼人地区民生委員児童委員連絡協議会、霧島市地域包括支援センター、姫城地区地域女性団体連絡協議会、日当山温泉旅館組合、医療福祉関係者ならびに隼人姫城地区自治会と住民の総勢179名が参加して行われました。
徘徊模擬訓練とは、道に迷って自宅に帰れずに困っている認知症高齢者の発見、声かけ、保護などの体験を通して、それぞれの役割を理解したり、認知症高齢者への接し方を学び、警察や消防、家族に通報・連絡して事故を未然に防ぐことを目的に、地域全体で見守る体制づくり(徘徊SOSネットワーク)と地域住民一人ひとりが認知症に関心をもっていただき、適切な対応と連携を図るための訓練です。
この日は認知症高齢者に扮した福祉施設の職員5人が姫城公園周辺を徘徊し、参加者が「何かお困りですか?」「大丈夫ですか?」「どこに行かれますか?」「家はどこですか?」などの声をかけたり、付き添って道案内をしましたが、声をかけた内容と違った返事が返ってきて戸惑う参加者や追いかけられたり、取り囲まれて逃げ惑う?徘徊老人など、お互いに焦って四苦八苦する場面も見受けられました。
徘徊模擬訓練終了後、会場を隼人姫城地区公民館に移し、徘徊モデル役を務めたスタッフを交えての意見交換会が開かれました。参加者へのアンケートで「参加するだけでも勉強になった」「本当に遭遇しても全く知らないよりは声かけがしやすいと思う」「声かけの難しさを感じた」「拒否されたら次にどうしたらよいのか難しい」「声をかけるタイミングが難しかった」「自分が認知症にならないとも限らないので、人ごとではなく、みんなで助け合うことが大切だと感じた」「トイレに行きたいと頼まれ、どう対応してよいか迷った」など、モデルの迷演技?に圧倒されて戸惑った参加者も多かったようでした。
最後にたけちゃん一座の介護劇「あの白い雲のように」が上演され、認知症の霧島トメさんが行方不明になって、地域の人たちが捜索する場面を交えながら、認知症への理解を深めていただきました。
こうして徘徊模擬訓練は事故もなく無事に終了しましたが、今回の訓練はあくまで認知症の人の言動や特徴から対応法を学び、行方不明になった場合の早期発見と保護を目的とする捜索前の基本的な声かけ訓練でしたが、実際には認知症なのか?徘徊しているのか?情報(名前や住所、服装など)がない場合、それを見極めるのはきわめて難しいのが現状です。今後は、行方不明者を捜すための地域ネットワークづくりと、それを活用した通報~連絡~捜索~発見・保護までの情報伝達の流れを訓練することが重要です。具体的には、地域住民や既存のネットワークで早く確実に情報を伝え、SOSネットワークの実効性を高め、認知症サポーター養成講座を活かした声かけ訓練を継続しながら 見守り、支える地域住民の意識を高めていくことです。
次回は、隼人南地区(富隈小学校区)での開催を予定していますが、認知症になっても安心して暮らせる町づくりを目指して、これからも地域住民の皆様のご理解とご協力をお願い致します。
霧島市隼人姫城地区徘徊SOSネットワーク協議会 代表:村岡宏章
※写真提供:後藤琢馬(ふれあい企画)・岩佐佐和子(デイサービスセンター今日館)