大学目薬
ある入居者から「大学目薬を点けてください」と言われ、職員は「大学ノートは知ってるけど…大学目薬って何?」 聞き慣れない、ちょっと古めかしいネーミングですが、皆さんはご存知ですか?
実は古くからある有名な目薬で、田口参天堂(現在の参天製薬)が1890年(明治23年)に発売し、現在も製造されている114年の歴史を持つ超ロングラン商品なのです!大正~昭和(戦前)生まれの入居者にとっては馴染みの目薬らしく、ご存知の方が数人おられました。
現在のプラスチック容器と違ってガラス瓶先端のゴム製キャップを指先で押して点眼したそうです。 『大学目薬』のほかに『ロート目薬』が有名で、発売当時の価格は1本10銭でした。※参天製薬ホームページから一部転載
心臓が停止した人に電気ショックを与えて正常な状態に戻す医療機器AED(自動体外式除細動器)を一般市民が使えるようになって10年になります。鹿児島県内の学校や公共施設を中心に設置されていますが、その使用率(実施率)はわずか6%にとどまり、景には使用をためらう人が多く、根強い抵抗感があるようです。もし、目の前で人が倒れたら(倒れていたら)…そんな身近で起きる救命救急に備え、8月22日に当ホームで霧島市消防局による救命処置(心肺蘇生法とAEDの使い方)の講習会を開催し、新七地区の住民、自治会長、民生委員、利用者家族、市役所ならびに地域包括支援センター職員、スタッフの総勢20名が参加して行なわれました。
体モデル3体にそれぞれ5~6名に分かれ、消防署員から心肺蘇生法とAEDの重要性について説明があり、その手順や留意点を解説しながら指導していただきました。実際に心肺蘇生法とAEDを行なった参加者は「心臓マッサージは胸を圧迫する姿勢や要領がわかりましたが、体力のいる作業でした」「AEDの器械がアナウンスで指示してくれるので、不安なくできました」「こうした訓練を何回もやって身体で覚えることが大事ですね」「一人では不安ですが、こうして皆さんと協力してやればできると思います!」自信に繋がった様子でした。また、泉歯科医院から参加された泉直孝院長と新納アコさんは「患者さんのもしもの事態に備えて参加しました。医院にAEDの設置を検討したいです」と真剣な表情で取り組んでいました。
工作の達人
ゆうゆうの玄関を入ると、靴棚の上に写真や工芸作品を展示するスペースがあり、来訪者の目を楽しませています。中でもひときわ目を引くのが切り絵や紙粘土細工で、作者は御供田正子さん(2号館職員)です。今回はその作品をいくつかご紹介します。
色付けしたハート型の花びら一枚一枚を組み合わせた紙粘土のアジサイやカタツムリが通った跡をリアルに再現!十五夜を愛でる様子もミニチュアのセットで表現するなど細部までこだわった演出、そして何よりも、これらの材料が百円ショップ商品や古着の生地で作られているというから驚きです!!
供田さんは、休日に時間を見つけて制作しているそうですが、その陰には協力者で良き理解者でもあるご主人の存在があります。お金をかけずに工夫して作る過程を楽しむご主人と分担しながら二人三脚で制作する作品には、息の合った夫婦の絆が感じられお二人の愛情が込められています。そんな御供田夫妻…いつもありがとうございます。
イモリとヤモリ
「キャーッ!」とトイレから女性の悲鳴で駆けつけると、指差した窓にトカゲのような生き物が張り付いていました。よく見るとイモリかヤモリのようですが、区別がつきません。そこでインターネットで調べてみると…からだ全体が黒く、お腹が鮮やかな赤色をしているのがイモリで、全体が黄色っぽいのがヤモリだそうです。イモリはカエルと同じ両生類で主に水中に棲んでいます。井戸水に発生する害虫を食べてくれることから「井戸を守る」で井守(いもり)の名前が付きました。一方、ヤモリはトカゲやヘビと同じ爬虫類で、陸上で生活しています。家の蚊や蛾などを食べてくれるので、「家を守る」で家守(やもり)の名前が付いたそうです。
なるほど!ということで、この生き物はヤモリでした。それにしても、最近はめっきり姿を見かけなくなりましたが、昔からヤモリが棲みつく家は縁起が良いといわれるので、何かいい事があるかもしれませんね。
【編集後記】
居者の高齢化に伴う寝たきりや看取り、特養・老健の待機者増加による介護難民の受け皿にもなっているグループホームの現状を踏まえ、多様化する利用者ニーズにどう対応すべきか?従来の認知症ケアや共同生活機能にとらわれない、柔軟な運営が求められている。
デング熱…聞きなれない病気に不安が募る。主に熱帯雨林地域で発生し、蚊が媒介して発症するらしく、地球温暖化や交通輸送の発達による人の流動が拡散の要因になっている。マラリアや日本脳炎も含めて、蚊やダニは人類の脅威になりかねない。刺されないよう、くれぐれもご用心ください!
ドールセラピー(人形療法)
「先生! 赤ちゃんが息をしていません…助けてください!」人形を抱きかかえながら管理者のもとへ駆け寄るマリ子さん…一体何があったのでしょう!?すぐに聴診して「赤ちゃんは大丈夫!ちゃんと息をしているから安心してね」と説明すると、いつもの笑顔が戻り「先生、ありがとうございました。お陰様で目が開きました。このご恩は死ぬまで忘れません。お礼はあの世でしますから…(笑)」と丁重なお礼の言葉をいただきました。
介護老人保健施設からグループホームに入居して半年のマリ子さん…日課のように家族を探して徘徊する傍らには、いつもモンチッチ人形を肌身離さず抱いています。介護老人保健施設のスタッフからプレゼントされたモンチッチ人形は、どう見てもサルの赤ちゃんにしか見えませんが、本人は自分の赤ちゃんと思い込み、頭を撫でたり、おんぶしたり、時にはオッパイを与えたり、毎日愛おしく世話をしています。こうした人形やぬいぐるみを大事そうに抱きかかえている認知症高齢者をしばしば見受けますが、怒ったり、泣いたりした際に人形を渡すと落ち着きを取り戻すことがあります。
ドールセラピー(人形療法)』は、高齢者が潜在的に持っている創造性や感性、感情を表出できる対象者に人形やぬいぐるみを提供し、赤ちゃんの抱き心地(感触)や語りかけるような目、表情(視覚)を通して子供に注いだ愛情や母性本能を蘇えらせ、失いかけていた世話や生活を回復しようというものです。人には最後まで壊れない機能に「感触」と「感情」があり、自分が最も幸せで自信に満ちていた頃の感触と感情は、高齢になっても認知症になっても忘れないものです。多くの女性は自分の赤ちゃんを抱いたときの強い感動とともに幸福感を味わい、子育ての時期は人生で最も自信と幸せに満ちていたはずで、子育てしていた頃の赤ちゃんの存在は大きかったと思います。また、出産経験のない人や男性も赤ちゃんを「かわいい」と感じる本能を持っています。「触る」「抱く」行為には癒し効果があり、アニマルセラピー(ペット療法)もこの効果を利用したものです。
多くの高齢者は、孤独・病気・老化・認知症などによる精神的不安を抱え、高齢者福祉施設に入所している人は、自分がなぜ施設にいなければならないのか解らず、日々不安を感じている人も少なくありません。そんなとき、「触る」「抱く」という行為で、簡単手軽に心への働きかけができるのが『ドールセラピー』です。人形やぬいぐるみというと子供のオモチャのイメージが強いのですが、高齢者の認知症ケアに有効だと思います。手軽で身近な人形やぬいぐるみは、ペットや赤ちゃんのように相手を気遣う必要はありませんが、手触り感(肌触り)やサイズ、顔の表情などに心地よさと癒しが感じられるものでなければ高い効果は得られません。
子守りという「役割」を担ってもらうことで、問題行動(行動障害)が軽減した事例が報告されており、認知症の女性に『ドールセラピー』を行なうと、子育てという「役割」効果で認知症状が改善することがあります。特に人形を自分の子供と誤認するケースは期待できるかもしれません。『ドールセラピー』は感情に働きかけるのが狙いで、特に赤ちゃんを可愛いと思ったり、子育て経験がある女性に効果的だといわれていますが、男性も本能的に赤ちゃんや子供は可愛いと認識する感情が残っており、世話をしてあげるものだという意識があり、子育てをした当時を思い出して活き活きとした表情に戻ることがあります。赤ちゃん(子供)に何かしてあげたい、あやしたい、抱っこしたいなどの欲求が笑顔やコミュニケーションに繋がったりします。
マリ子さんが入居した当初、人形を抱っこしている様子を見ていた周りの入居者は少し冷めた目で見ていましたが、いつしか自然と笑顔に変わり、これが連鎖的効果を発揮して、マリ子さんが家族を探しながら毎日大声で叫んだり、出口を探して入居者の部屋に入り込んだり、ドアを叩いたりしながら辺り構わず徘徊しても、叱ったり、無視したりせず、暖かく見守ってくれるようになり、時には赤ちゃんを預かって、代わりに子守りをする微笑ましい光景も見られるようになりました。
なお、ここにご紹介した『ドールセラピー』を実践するにあたり、それが人形なのか?赤ちゃんなのか?本人と周りの関係者が認識を統一して、混乱させないようにすることが大切です。また、人形にしか話しかけなくなったり、殻に閉じこもってしまうこともあるので注意が必要です。